前後左右のバランスが重要~骨盤骨につく筋肉

骨盤には沢山の筋肉がついている

筋肉の名前を見るとどれも馴染みのない名前ばかりで難しく思えるかもしれません。しかし筋肉のついている始まり部分(起始)や終わり部分(停止)に注目すると、双方の骨や場所を含む名前だったり、筋肉の作用に関連する文字を含む名前だったりする場合が多くあります。

専門家でなければ全ての名前を把握する必要はありませんが、どの場所にどのような筋肉が付いているのかおさえておくと、身体の動きや傷みについての理解が深まるでしょう。

もくじ
骨盤についている筋肉を知る
 骨盤骨についている腹筋
 骨盤骨についている背筋
骨盤につく浅層の背筋
骨盤につく深層の背筋(固有背筋)
 骨盤の内部にある腸腰筋
 骨盤外部についている殿筋群
 骨盤骨についている大腿の筋
骨盤底筋とは?骨盤底筋という名前の筋肉があるわけではない
複雑な関節の動きほどより沢山の筋肉が関与して動く
筋力のバランスや柔軟性が大切

骨盤についている筋肉を知る

どの筋肉が骨盤のどの位置からどこまで伸びているかを知ることで、筋肉の作用を予測することができます。筋肉の作用がわかれば身体の不調の原因を考えることができるので、筋肉の起始(始まり)と停止(終わり)を大まかに覚えると良いでしょう。

骨盤骨についている腹筋

腹部の筋はすべて骨盤の恥骨・腸骨についています。
腹部を収縮する筋肉なのでほとんどが脊柱や体幹を前屈させたり側屈させたりする作用をもちますが、腰方形筋のみ両側同時に収縮すると腰椎を後屈させるはたらきがあります。

筋の名称 起始 停止 筋の作用
腹直筋 恥骨・恥骨結合 第5~7肋軟骨前面
剣状突起前面
体幹の屈曲
錐体筋 恥骨 白線 腹直筋の作用を補助
内腹斜筋 胸腰筋膜
腸骨稜
鼡径靭帯
第10~12肋骨下縁
腹直筋鞘
脊柱の前屈
体幹の側屈
腹圧を高める
外腹斜筋 第5~12肋骨外面 胸腰筋膜
腸骨稜
鼡径靭帯
脊柱の前屈
体幹の側屈
腹圧を高める
腹横筋 第7~12肋軟骨内面
胸腰筋膜
腸骨稜
鼡径靭帯
腹直筋鞘 脊柱の前屈
体幹の側屈
腹圧を高める
腰方形筋 腸骨稜 第12肋骨 腰椎の側屈・後屈

 

骨盤骨についている背筋

背筋の一部も骨盤についています。深層にある脊柱起立筋は脊柱を直接支えており、固有背筋といわれます。

骨盤につく浅層の背筋

背筋というと背中の動きに関与するイメージがありますが、背部浅層の筋は上肢の運動に関与します。背下部に大きくついている広背筋は胸腰椎や肋骨の他に、仙骨や腸骨も起始としています。

筋の名称 起始 停止 筋の作用
広背筋 第7~12胸椎棘突起腰椎棘突起
仙骨の棘突起
第9~12肋骨
腸骨稜
上腕骨小結節稜 上腕骨を背面にむかって内旋・内転させる

骨盤につく深層の背筋(固有背筋)

脊柱起立筋は背部の筋の中で最も深層に位置していて、脊柱の運動に関与します。
脊柱起立筋は外側から内側にむかって腸肋筋・最長筋・棘筋の3つに分かれていて、すべて同じ位置を起始とし(高さにより仙骨背面・下部腰椎棘突起・腸骨稜)、それぞれ別の位置に停止します。一部の脊柱起立筋は仙骨や腸骨を起始とします。

筋の名称 起始 停止 筋の作用
脊柱起立筋
①腸肋筋
②最長筋
③棘筋
仙骨の背面
下部腰椎の棘突起
腸骨稜
①肋骨
②棘突起または肋骨
③上位棘突起
頭・脊柱の背屈と側屈

 

骨盤の内部にある腸腰筋

骨盤内壁から骨盤内部を通って大腿骨まで伸びている内寛骨筋とよばれる筋肉があります。内寛骨筋に該当する筋肉には腸腰筋があり、大腰筋と腸骨筋に分かれます。腸腰筋には股関節を屈曲する作用があり、下肢を固定すると上半身の前屈がおこります。
腸腰筋のうち腸骨筋は腸骨から始まります。

筋の名称 起始 停止 筋の作用
腸腰筋 腸骨筋:腸骨窩
大腰筋:腰椎椎体
肋骨突起
大腿骨小転子 股関節の屈曲
(上半身を前屈)

骨盤外部についている臀筋群

骨盤内壁からおこる内寛骨筋に対して骨盤外壁にある筋肉を外寛骨筋といいます。外寛骨筋は殿筋群とも言われ、これらの筋はすべて骨盤から始まります。

筋の名称 起始 停止 筋の作用
大殿筋 腸骨外面
仙骨
尾骨後面
仙結節靭帯
大腿骨殿筋粗面
腸脛靭帯
大腿の伸展
腸脛靭帯の緊張による膝関節伸展(直立姿勢の保持)
中殿筋 腸骨外側面 大腿骨大転子 大腿の外転
小殿筋 腸骨外側面 大腿骨大転子 大腿の外転
大腿筋膜張筋 腸骨上前腸骨棘 腸脛靭帯を経て脛骨上端へ 大腿の屈曲と下腿の伸展
梨状筋 仙骨前面 大腿骨大転子 大腿の外旋
内閉鎖筋 閉鎖膜内面 ※1 大腿骨転子窩 大腿の外旋
双子筋 坐骨棘
坐骨結節
大腿骨転子窩 大腿の外旋
大腿方形筋 坐骨結節 大腿骨転子間稜 大腿の外旋

※1 閉鎖膜 … 寛骨臼下部にある坐骨後部と恥骨で囲まれた閉鎖孔を閉じている膜

骨盤骨についている大腿の筋

股関節の動きに関与する大腿の筋も骨盤の骨から始まるものが多くあります。多くは骨盤骨から起こり大腿骨に停止しますが、大腿直筋や大腿二頭筋など一部の筋は股関節と膝関節の2つの関節をまたいでついているため、収縮すると股関節と膝関節両方を動かします。

筋の名称 起始 停止 筋の作用
縫工筋 上前腸骨棘 脛骨粗面内側部 大腿の屈曲・外転・
外旋
下腿の屈曲・内旋
大腿四頭筋
①大腿直筋
②外側広筋
③中間広筋
④内側広筋
下前腸骨棘
②大腿骨粗線外側唇
③大腿骨体前面
④大腿骨粗線内側唇
脛骨粗面 下腿の伸展
①のみ大腿の屈曲にも作用
恥骨筋 恥骨櫛 大腿骨恥骨筋線 大腿の屈曲・内転
長内転筋 恥骨体前面 大腿骨粗線内側唇 大腿の内転
短内転筋 恥骨下肢前面 大腿骨粗線内側唇 大腿の内転
大内転筋 坐骨結節
坐骨枝と恥骨下枝前面
大腿骨粗線内側唇
大腿骨内側上顆
大腿の内転
薄筋 恥骨下枝前面 脛骨粗面内側部 股関節の屈曲
膝関節における下腿屈曲と内旋
外閉鎖筋 閉鎖膜外面 ※1 大腿骨転子窩 大腿の外旋と内転
大腿二頭筋
①長頭
②短頭
坐骨結節
②大腿骨粗線外側唇
腓骨頭 ①股関節伸展
①②膝関節における下腿の屈曲・外旋
半腱様筋 坐骨結節 脛骨粗面内側部 股関節伸展
膝関節における下腿の屈曲・内旋
半膜様筋 坐骨結節 脛骨内側顆 股関節伸展
膝関節における下腿の屈曲・内旋

※1 閉鎖膜 … 寛骨臼下部にある坐骨後部と恥骨で囲まれた閉鎖孔を閉じている膜

骨盤底筋とは?
骨盤底筋という名前の筋肉があるわけではない

書籍やインターネットなどでよく見かけるようになった”骨盤底筋”という言葉。

いかにも筋肉の名前のように聞こえますが、実際に骨盤底筋という名称の筋が存在するわけではなく、骨盤下部の筋肉をまとめて骨盤底筋と呼んでいます。

最近ではお腹ポッコリや尿漏れなどの予防対策として骨盤底筋群の様々なトレーニングが推奨されています。特に女性に嬉しい効果が沢山ありますので、気になる人は取り入れてみましょう。

複雑な関節の動きほどより沢山の筋肉が関与して動く

骨盤の後面の仙腸関節は極わずかな可動性しかもたず、前面の恥骨結合も軟骨結合による不動関節であるため、どちらも大きくバリエーションに富んだ動きをする関節ではありません。しかし骨盤上部では仙骨と腰椎が複雑な体幹の動きの土台となる腰仙関節をつくり、外下部では寛骨臼と大腿骨が大きな可動性をもつ股関節をつくっています。

どちらも多くの筋で各方向から支えられており、屈伸や回旋などを組み合わせた複合的な運動を行うため、同時に沢山の筋肉が作用しています。

筋力のバランスや柔軟性が大切

私たちの身体は複数の関節の動きを組み合わせて様々な動作を行います。各方向の動きをスムーズに行うには、ただ筋力アップのみを目的に鍛えるのではなく、付着している筋肉の柔軟性高めることも不可欠です。

特に一方向に偏った動作を繰り返す競技をしている人や仕事で同一姿勢の保持が多い人は、負担の多くかかる部位を把握して重点的にストレッチを行うなど、けがに繋がらないような対策を心がけましょう。

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